2023年9月1日。ようやく目的のトレイルに入ることができました。
そしてこの日、初めてアメリカの山での野営を経験することになります。
野宿の作法
日本の山でテント泊する場合、山小屋が管理しているテント場や、何かしらの指定地にテントを張ることが一般的です。
一方、今回歩いたアメリカのシエラネバダ山脈では、山小屋などはなく、ハイカーが自分で適切な場所を見つけて野営することになっています。
どこでも好きなところに張っていいかというと、決してそうでは無くて、ちゃんと環境やほかのハイカーに配慮するための決まりがあります。
例えば、
- 水場のそばはダメ
- トレイルから離れないとダメ(後から来るハイカーの自然体験を損ねるため)
- 草地の上は植物にダメージを与えるからダメ
といった具合です。
それらを守ったうえで野営場所を選べるんですね。
じゃあ上記を満たしていればどこでもいいかというと、確かにルール上はどこでもいいわけですが、やっぱり寝床は安全で快適なほうがいいわけです。
- 落石ないよね?
- 平らなところがいい
- 柔らかい地面のほうがいい
- 風が強いところは嫌
- 寒いと嫌
- 蚊が多いと嫌
- etc…
毎日夕方が近づくと、物件選びタイムが始まります。
こういったことを意識しながら、キャンプ適地の情報や地図情報をもとに、「今日はどの辺で野営しようか?」「どの辺なら野営できそうか?」を考えながら歩く必要があるのです。
今日の寝床を探す
この日、アメリカ野宿初心者のぼくは、寝床のことなんて何も考えずに歩いていました。
ルールさえクリアしていればどこでも寝ていいのだから、「好きなだけ歩いて日が暮れたところで寝ればいいや!」とお気楽に考えていました。
今まで山小屋の指定野営地しか使ったことがなかったので、自分で快適な寝床を探すという発想がなかったのです。
かなり険しいルートだったのですが頑張って歩いて、気が付いたら森林限界を超えていました。
あたりは花崗岩の巨岩がごろごろと転がり、くぼ地には雪がべったり残っています。
峠が近いのと、天気が崩れ始めているようで、えらく強い風が吹いていました。
ここに至ってようやく気が付きます。
「あれ?ここでテント張るの無理じゃね??」
テントがこの風に耐えられると思えないし、そもそも岩だらけで平らな地面がほとんどありません。日のあるうちに峠を超えられるとも思えないし、仮に超えられたとしてキャンプ適地を見つけられる保証はありません。
結局、せっかく頑張って登った道を引き返し、林の中でわずかな平らな地面を見つけて野営しました。ちっこいテントでよかった。
この夜は一晩中風が強く、少し離れたところを風の塊がうなりをあげて通り過ぎていくのがずっと聞こえていました。
この風の塊がテントの近くに来ると、テントがバタバタっとはためき、ポールが折れるのではないかと不安になったものです。
この大自然(Wilderness)の中を歩いていくには、いろいろ考える必要がありそうだと気づいた夜でした。