JMT日記:アメリカの見慣れない花たち

この記事では、8月末から9月の中旬にかけて歩いたアメリカ・カリフォルニア州のトレイルで見かけた花について書いていきます。

9月ともなると夏山シーズンも終盤で、高山植物も終わっているのではないかと思ったのですが、意外とたくさんの花が咲いていました。

見たこともない形状の花もあれば、日本の山で見慣れた種類もあり、どちらにしても楽しめました。

その中でも、日本では見慣れない「なにこれ!」な花たちを紹介していきたいと思います。


目次

マリポサ・リリー

学名:Calochortus gunnisonii
英名:Gunnison’s Maripsa Lily

水場から距離があって適度に乾いた明るい林の中でよく見かけました。

地面からひょろりと茎だけ伸びて、立派な白い花をつけているのが印象的です。

属名のCalochortusはギリシャ語の「美しい草」から来ており、きれいな葉っぱをしているらしいのですが、花が咲くと枯れてしまうため見ることはできませんでした。

花が咲いていなかったら、いくら葉っぱがきれいでも気がつかなかったと思います。

地下には球根があり、多くのネイティブアメリカンの部族で食用あるいは薬用として利用されていたそうです。

英名のMariposaはカリフォルニアの町で、ヨセミテ国立公園の玄関口になっています。

町の名前を冠するマリポサリリーは、この地域の固有種なのかな?

砂地に咲くぱさぱさのピンクフラワー

学名:Cistanthe monosperma
英名:One-seeded Pussy Paws

標高が高く樹木が生えていないような、砂、砂利が多く乾燥したエリアで見かけました。

葉も肉厚で見るからに乾燥に強そうです。

小さな花が集まってもふもふした形状をしています。これが猫の足裏に見えることが英名の由来です。

写真は地べたに這うように花をつけていますが、垂直に茎をのばして高い位置に花をつけているものもありました。

調べてみたところ、一日の中でも時間帯によって花の位置が変わるらしいです。面白いですね。

ガレ場のとげとげポピー

学名:Argemone polyanthemos
英名:Annual Prickly Poppy

砂地の斜面に生えているのを見かけました。かなり乾燥している土地でしたが、立派な花を咲かせています。

葉っぱも、つぼみも、実も、どういうわけかトゲに覆われています。いったい何と戦っているのでしょう?

属名のArgemoneはギリシャ語のargemaに由来し、「白内障」を意味します。その理由は、かつては目の治療薬として使用されたためです。

日本語だとケシ科アザミゲシ属。アザミのようにトゲを持つケシのグループのようです。

全草に毒があるため食べることはできません。

ケシ科だし、薬にされていたことといい、何かしらアルカロイドを持っていそうです。

インディアンの絵筆

学名:Castilleja coccinea
英名:Scarlet Indian Paintbrush

木がまばらになるくらいの標高で、明るく、小川が流れているような緑豊かな斜面でよく見かけました。

英名の「スカーレット」がいいですね。ただの赤ではない鮮やかさがあります。

実はこの赤色の部分は花びらではなく、苞(ほう)と呼ばれる葉の一種です。

写真ではわかりにくいですが、苞の先端から覗いている黄色の部分が本物の花。

花が終わってしまっても苞は鮮やかなままなので、トレイルを歩いていてもパッと目を引くボリューム感があります。

生態も面白く、根っこをほかの植物の根に固定して、栄養を吸い取って生きています。部分的に寄生して生活しているんですね。

流れ星の花

学名:Dodecatheon pulchellum
英名:Shooting Star

林の中の、ぬかるむような水辺の近くでよく見かけました。

花びらが後ろに反り返り、おしべを突き出す花の形はバドミントンのシャトルみたい。その形状を流れ星に見立てて、英名がつけられています。

個人的には、流れ星より彗星のほうがしっくりくる形だと思うんだけど。

Shooting Starはよく交雑するようで、より色の濃いものから白に近いものまで、様々な色合いが見られるらしいです。

1枚目と2枚目は別のエリアの群落です。光の加減かもしれませんが、1枚目はピンクが、2枚目は紫が強い気がします。

ギンリョウソウの親せき

学名:Pterospora andromedea
英名:Woodland Pinedrops

でっかい松の木が林立する薄暗い林床に、にょきっと生えていました。

葉っぱもなく、枝分かれもなく、いきなり生えてきた茎に花だけついている様は、明らかに普通の植物じゃありません。

キノコみたいにいきなり生えてきて、花だけつける。緑色をしていない。

ちょっとギンリョウソウと似ている気がしませんか?

八ヶ岳のギンリョウソウ

実は、Pinedropsはギンリョウソウと同じMonotropastrum(ツツジ科シャクジョウソウ亜科)に属していて、地中の菌類に寄生して栄養を得ています。

ほとんど葉緑素を持っていないので緑色をしておらず、光合成も行わないのです。

Pinedropsが寄生する菌類は松から栄養をもらっており、そのために松林に生えていたようです。名前もそこ(Pine Tree:松)から来ているのでしょう。

ギンリョウソウがツツジ科ということも今回調べて初めて知りました。

言われてみればPinedropsもギンリョウソウも、ドウダンツツジみたいなツボ型の花をしていますね。